安城建築のミッションでもある「家族の絆」。どうしてこれをミッションに掲げたかの理由はこれまでお話ししたことは余り無かったと思う。

幼い頃、両親はとても忙しく、私は曾お婆さんといつも一緒だった。しかし、保育園に入園し暫くすると曾お婆さんは他界した。何とも形容しがたい空虚感。寂しさを紛らわす為か、物に対する愛着感は人並み以上になっていったと思う。

もう二度と使うことの無い物が捨てられない。あなたはこんな経験をしたことがないだろうか?その物を捨てることにより、想い出までも捨て去るそんな気持ちとなったことを。

私はそれが極端だったと思う。自分と一緒に生活をしていた物たちが捨てられなかった。おそらく、曾お婆さんが他界した後、共に悲しみや喜びを共有してきた仲間であり、それを捨てると言うことは、まさしく自分の過去を消されてしまうかの様に思えた。

その為、私は大掃除が大嫌いだった。大掃除になる度、私の過去を消されていくことがとても悲しく、市の危険物に出された物たちを親の目を盗みこっそりと回収し、倉庫の奥に隠し続けた。

それから数十年。私の結論として人は「物質的要因」だけでは満たされないと確信している。

皆様と共有出来る話しとして以前この日記でも少し触れたが、911のテロが最も象徴的な出来事だったと思う。世界貿易センタービル通称ワールドトレードセンタービル。ここで働く人々はエリート中のエリートであり、多くの人々から憧れる仕事と収入を得ていた。そしてここで働くことは人生の成功者の証でもあった。勿論、ここで働く人々の華族もそう感じていたに違いない。

しかし、あのテロによってその考えも崩れ去った。人間としての本当の豊かさとは分かち合いや共感であり、心の充足である。そこには常に「ひと」がいた。心の充足にはひととの関わりが無くてはならないのである。残された遺族もそれを確信したのである。

安城建築のつくる家は物である。しかし、その家づくりを工夫することにより、ひとの感性に響くものとなり、そこに暮らす人と人を結びつけやすく、時には家自体が家族の求心力とする工夫も可能となる。それが安城建築の役目だと私は考えている。

「どんな暮らしをしたいですか?」という質問を長く続けていくと多くの人たちは「家族全員が笑って暮らせ、家族が幸せになる暮らし」に行き着く。

宣伝広告のキャッチコピーだけでは無く、私たちの取り組みから家づくりに渡り、全てをこの部分に結び付けていく必要がある。その為に安城建築では「家族の絆」をミッションに掲げている。

創業昭和四年 安城建築 浅井宏充