函館の西洋館の外壁をサウンドペーパーでこすると古い建物ですと十数層に渡り過去の色が浮かび上がってきます。これをこすり出しと言います。こすり出した部分を見るとそこには建物の歴史が刻み込まれています。

函館の西洋館の基本デザインは、長年人々から支持され続けてきたクラシックデザインがベースとなっているため、100年以上経た現代においても人々を魅了するものがあります。それに加え時代の流行や街の近代化、お施主の趣味嗜好、及びお施主の年齢に伴う趣味嗜好の変化等様々な理由により塗り替えられ、その度、建物が新たに蘇ってきたことでしょう。

以前、弊社の塗装職人が、言ったことがあります。

『日本の家は塗り替えが終わって眺めてみると、きれいになったと思う』

『しかし、クラシックベースの建物を塗り替えた時、新品同様になった。と感じた』と話していました。それはこの函館の西洋館も同様のことでしょう。

現代の建築では、塗り替えをしないで済むことがあたかもユーザーのメリットだという風潮ではあります。確かにランニングコストだけを考えれば、メリットですが、塗り替えることにより、同じYシャツやドレスもカラーリングが変わることで全く新たな価値あるものに生まれ変わってしまうことと同様です。それは計り知れない満足度をユーザーにもたらせてくれることでしょう。

創業昭和四年 安城建築 浅井宏充