昨年の誕生日に息子から夜回り先生の本をプレゼントされた。以前、一緒に夜回り先生の講演を聞きに行ったことを覚えていたからだろう。

この先生ほど全ての人生を子供たちに捧げ、生徒に向き合い壮絶な生き方をしている先生を私は知らない。自らの指と引き換えに子供(他人子供)を暴力団から足を洗わせた。

先生は、今癌に侵され、余命宣告をとうに過ぎている。しかし、夜回りが出来なくなるという理由で、抗癌治療していない。おそらく、天が生かし続けているのだろう。

講演会で今でも鮮明に焼きついた光景があった。

休憩時間の間、先生は黙々と書籍を購入した方へ黙々とサインをし続けていた。形容し難いが、その様子は真剣の域を超えていた。

先生から4?5メートル程離れた場所に独り立ち尽くす若い女性が居た。その女性は、立ち尽くしながら泣いていた。直感的に、先生のひた向きな生き方に涙せずにはおられなかっただろうと思った。

アメリカの心理学者マズローが唱えた法則によると、人の欲求には5段階の欲求があるという。人は段階的に欲求を満たしたくなるという法則である。始めは生理的欲求・2段階目に安全の欲求・3段階目に社会帰属の欲求(仲間が欲しい)・4段階目に尊敬の欲求(尊敬されたい)・5段階目に自己実現(自分はこうありたい)の欲求である。最後の5段目は自己実現となっているが、水谷先生はこれにも当てはまらない。マザーテレサ同様、「自分は・・・」では無く、ただ無心に「あなたを救いたい」ただ、それだけである。

創業昭和四年 安城建築 浅井宏充