四七抜き音階とは、簡単に説明すると4番目と7番目の音階であるファとシの音が無
い音階であり、昔から日本の童謡等に懐かしさを感じるメロディのスパイスとして使
用されてきた。

スコットランド地方に昔から伝わる民謡の音階でもあり、スコットランド音階とも呼
ばれているという。

誰もが知る四七抜き音階のメロディで代表的なものは「赤とんぼ」「蛍の光」「ド
ヴォルザーク新世界から(遠き山に日は落ちて)」がある。これらのメロディは、切
なさといとおしさが胸に込み上げひとの琴線に染みる。

何故だか解らないが、ひとはこの琴線に触れると、誰もが優しくなる。それは、国を
越えても、時代を経ても変わらない普遍的なものである。

驚いたことは、琴線に触れるメロディに法則があるということ。
安城建築がいつも心掛けている「懐かしさを感じる外観デザイン」に精通するものが
あると深く感じた。

以前、建築家の手塚氏と懐かしさを感じる外観デザインについて語り合ったことがあ
る。手塚氏曰く、その様に感じるデザインには、その様に感じる要素が必ず含まれて
いると言っていたことを思い出した。ノスタルジーを感じるデザインにも法則がある
ということになる。伝統的な建築様式をベースとし、この様な法則に基づきながら、
設計されたデザインは、100年後も200年後もいつまでも美しく人々を魅了する。

私が初めて建物から琴線に触れる様な不思議な経験をしたのは小学生の頃。
偶然見つけた安城農林高校の近くに建っていた「山崎会館」を観たときである。
既に使用されていなかったが、あたかもこの建物が現役の頃から自分が存在していて、
ずっと長い間見守ってくれていてくれた様な不思議な感覚だった。
とても愛しい感覚だった記憶がある。

音楽と建築と全く異なるものであるが、安城建築がノスタルジーな家をつくり続ける
ことにより、観る人々の感性・感情に響き、穏やかにし、優しい気持ちになって
もらえれば、その優しさの波紋が街中に広がっていくのでは? そう感じている。

流行に左右されないノスタルジーデザインは、安城建築イズム(安城建築の美学)で
もある。

創業昭和四年 安城建築 浅井宏充