この建物は、安城建築が次世代に継承したい建築という想いで十年前に建てたレトロ明治建築(擬洋風建築)。明治時代の輸入住宅であり、安城建築が手掛ける輸入住宅の原点でもあり象徴だと私は思っている。この建築からは、明治の時代に生きた技術者や職人の粋が伝わり、勇気を与えられてくれる、そんな気がします。

築十年を迎え塗り替え工事をおこなった。同色で塗るのでは無く、痺れる程美しい山形大学工学部(旧米沢高等工業高校・明治43年建築)をモデリングした。

数点の写真を元に、複数のスタッフや職人に実際のカラーチャートを基にどの色が一番近いか?というヒアリングから始まった。しかし、十人十色とはこのことを言うのでは?というほど、全て選んだ色が異なった。

実物(山形大学工学部の校舎)でカラーチャートを照合すれば一番正確なのだが、なにせ東北の米沢。

妻がひと言。「どうして行かないの?行くべきでしょう」

私、しばらく無言・・・。

「先人に学ぶことは大切だが、全くのコピーでは脳が無い」と適当なことを言って軽く聞き流す。(本心はいつからこんなに行動を促す様になったのかと驚く)

結局、色は定まらず、最終的に2色まで絞込み、その2色を外壁に試し塗りをして最終的にその色を少々調合し最高の色を見つけることができた。

何色とは言いがたい色彩ではあるが、何とも懐かしさを感じる色である。以前、この日記で懐かしさを感じ、人の琴線に触れる曲の多くが四七抜き音階(よなぬき)だということをお伝えしたが、色も同様に人の感性に響く色彩があるのでは?と感じる。

一般的に塗り替えは、維持管理費の支出の負のイメージがあるが、外観デザインそのものが正統派のクラシックな場合、塗り替えにより、何度でも新築気分を楽しめるという特権があると私は思う。

創業昭和四年 安城建築 浅井宏充