先日、あるお客様より塗り壁の家の施工例が少ないのは何故ですか?という質問があった。

海外の建築様式を日本で建築する場合、気を付けなければならない点は雨による漏水である。特に南仏タイルの様な塗り壁の家は、軒やケラバ(軒樋の付いていないほうの屋根)の出が少なく瓦から壁面に直接雨が伝わって来てしまう。

外壁通気工法による塗り壁ならその心配は少ないが、コストを抑える為に外壁合板に直接防水紙を貼り、メタルラス(モルタルを塗り付ける為のメッシュ状のものを直接外壁に取り付け、その上にモルタルを塗り付ける様な従来の施工方法の場合、極めて心配であった。理由は、モルタルには必ず細かなひび割れが必ず起こり、そのひび割れから漏水し、構造に致命的な結果をもたらす恐れがあるからである。

弊社も長年輸入建材の使用には苦い経験があり、常に改善に取り組み、後々修繕費や信用を失墜させてしまうことだけは避ける様な施工方法を吟味して来た。

昔の土壁の家は、機密断熱効果は低いが外壁から漏水しても直ぐに乾いてしまう。しかし、現代の住宅は高気密高断熱化され、一旦漏水すると乾きにくく、発見もしにくい。その為、安城建築では、長年に渡りひび割れが起こりにくく、もし万が一外壁面から漏水しても構造体に影響を及ぼさない工法が確立するまでは、南仏スタイルのリクエストがあってもお客様へはお勧め出来なかったのはその様な理由からである。

その当時、既に確実な工法として、通気ラスモルタル工法という工法があったが高価な為、ご予算に余裕がある方にしかお勧めが出来なかった。しかし、現在ではある程度安価で安心出来る施工方法も確立された為、弊社も自信を持ってお勧め出来るようになった。

時々、輸入住宅は日本の気候に合いますか?と言う質問があるが、気候に合わせた工夫をしない輸入住宅は致命的である。しかもこれは輸入住宅に限った事ではなく、どんな家でも同じことが言える。

デザインや装飾にこだわることも大切である。しかし、それ以上に長期に渡る耐久性を持たせる施工技術は、監督の細かな配慮やひと手間を惜しまない職人の志と技術を必要とする。

追伸、

これまで建てて来ました安建ファミリーの皆様の家は、モルタル下地・サイディング下地共に全て通気工法により建てられていますのでご安心下さい。

チューダースタイル1 塗り壁1
チューダースタイルの塗り壁の家(通気工法により施工される塗り壁)

通気工法による塗り壁モルタル下地高価であるがこれがモルタル下地の通気工法による施工方法。例え外壁面のひび割れより漏水しても裏側に通気層がある為、構造には直接影響は無い。当然、この通気部分を省けば、コストは下がる。しかも仕上げてしまえば見た目は全く同じである。しかし、非常に重要な部分である。技術屋としてこだわらずにはいられない。

創業昭和四年 安城建築 浅井宏充