私の仕事は家をつくることですが、この瞬間(解体)はとても寂しい気持ちになります。

以前、この日記で少し話したかと思いますが、少年時代の私は、古い物を捨てられませんでした。私にとって共に暮らしてきた物たちを捨てるということは、自分の想い出までをも捨て去る様に思えてなりませんでした。

多分、今でもその様な感情の名残がある様で、解体される家屋を見ると同様に感じます。この家に刻み込まれたお客さん家族の想い出が消されてしまうのではないかと。

壁の落書き、背比べした柱のキズ・・・。楽しかったこと悲しかったこと家には家族が共に暮らしてきた想い出が沢山刻まれています。

現場では三分の一程解体工事が進んでいましたが、帰り際、職人さんに玄関上の木製の表札を丁重に外してもらう様にお願いして現場を離れました。

創業昭和四年 安城建築 浅井宏充