先日、大井川鉄道に行ってきました。大井川鉄道と言えばSL。レトロな駅舎から発車する様子はタイムスリップしたかの様で、鉄ちゃん(鉄道ファン)で無くても痺れます。

駅舎もSLも客車も何故か格好いいと感じます。古さによるデザインの陳腐化を全く感じないのです。むしろ、凛とし極めて美しい。それがとても心地いいのです。実に不思議な感覚です。そうですね、私が明治村の三重県庁舎を初めて見た時の感覚と同じです。

車内放送によると、私が乗車した客車が戦前に造られたものでした。まさにこの客車のこの座席に座り、生きて帰ってくる命の保証も無く戦地へと向かったひとたちも沢山居たことだろう。そのひとたちの心情を察すると胸が詰る思いでした。

女性の車掌さん吹くハーモニカの『ふるさと』は、帰えることのできなかったひとたちへの鎮魂のメロディだと感じました。

このSLは名目上急行列車ではありますが、時折きしむ年老いた客車を労わるかのようゆっくりとゆっくりと大井川を上流への登って行きます。沿線の撮影ポイントには多くのSLマニアがカメラやビデオを構えその勇姿を納めています。嬉しかったのはいつも見慣れていると思われる沿線に暮らす子供たちからも何度も手を振られこと。見慣れている子供たちからしても、SLは特別な存在だという証です。

時代を超えてひとびとから愛され続けるSL。私も同様のものを遺していきたいと思いました。

創業昭和四年 安城建築 浅井宏充