以前から気になっていた洋館があり先日、小学3年生の甥っ子と散歩しながら見学しました。
既に使われなくなった古い洋館(写真)とその洋館に隣接する新しい建物(古い洋館をモデリングしたと思われる建物。写真はデザイナーに申し訳ありませんので割愛します)があり、私は甥っ子に尋ねてみました。
『どっちの建物の方が美しいと思う?』
甥っ子は一瞬の迷いも無く、古い洋館を指差し『こっち』と答えました。一般的に古いものより新しいものがより良く見えることでしょう。ましてや子供ならより、そう思うだろうと私は思っていましたが、その思いとは逆の答えが返って来たことに驚き、それと同時に子供の感性の鋭さは侮れないと感じました。
そして甥っ子の一言により、自分たちの歩んで来た道は間違っていなかったことに確信めいたものを強烈に感じ本当に嬉しくなりました。
この古い洋館のデザイナーは老若男女の感性の更に深い部分の琴線に触れることを間違いなく意識してデザインされたと私は感じます。そして、その感性の琴線というものは時代が移り変わっても全くその効用が不変であることが実に本当に素晴らしいと思います。既にこのデザイナーは他界されていると思いますが、この建物の魅力は時代を経ても輝き続けていることに何故か私は心が躍ります。
逆に残念に思うのは、技術的にもその古い建物を造った時代より圧倒的に建築技術が進んでいるにも関わらず、古い建物を超えられなかった新しい建物。古い建物からは細部に渡ってデザイナーと職人達の粋を感じることが出来ますが、新しい建物からはその粋も感じられず、当然の如く人の琴線に触れるもを感じないことは残念です。
甥っ子に対し、何故古くても人は魅力を感じるのかを熱く解説し始めてしまっている自分が妙に子供っぽく、甥っ子はそれを妙に冷静に聞くその様子が実に滑稽(こっけい)でした。
創業昭和四年 安城建築 浅井宏充