安城建築

社長日記 2008.09.22

「私は幸せですか?」

昨夜、東海テレビで知覧特攻隊の奉仕をしていた「なでしこ隊」のドキュメンタリードラマを見た。特攻隊員は人間の神とされ、笑顔で出撃していったと美化されていたが、実はそうではなかった。

結婚式直前に出撃命令をされた穴沢少佐が婚約者に残した遺書には、「自分のことは忘れて、幸せになって欲しい」と綴りながらも、最後は「会いたい、話したい」と、どうしても抑えきれない感情がひしひしと伝わってくる。想像を絶する壮絶な死生観の葛藤があったに違いない。翌日穴沢少佐は、婚約者である智恵子さんのマフラーを巻き、南の海に消えていった。

戦後63年、婚約者だった智恵子さんは、独り穴沢少佐慰霊と遺品の吸殻と共に暮らし続けている。智恵子さんは言った。

「鏡を見ると、しわくちゃのおばあちゃんだけど、穴沢さんの慰霊の前に立つと、若き日に穴沢さんに会ったあの時の私に戻ります」「穴沢さんが身につけていた遺品はこれしか無いのです」と、大事そうに小さな木の箱に入った吸殻を見せてくれた。

このドキュメンタリーを製作中に発見しただろうと思われるが、穴沢少佐の実家に保存されていた穴沢少佐の遺品である軍服と智恵子さんが再会するシーンがあった。

智恵子さんは丁寧に手に取ると、思わず軍服を顔に押し付け、感極まり、号泣された。

戦後63年、智恵子さんの緊張の糸が切れた瞬間の様だった。

63年、穴沢少佐を愛する相変わらぬ想いに強く心打たれた。

知覧は私も何度も訪れたことがあり、自分が考えさせられた場所として社内旅行でも訪れた。

私もそうだが、人は誰でも相対するものが無ければ、自分が幸福なのか不幸なのかまでも解らなくなる。特攻隊員の心情と比べたらあまりにも小さなことで悩んでいる自分が居る。

私が時々、知覧を訪れるのはその様な理由からである。

創業昭和四年 安城建築 浅井宏充