やっと風邪が治った。今年に入って2度目。先回は胃腸風邪が酷くなり急患で更正病院にお世話になった。久しぶりの病院だったが、先生や看護士の方々の若さに驚いた。(それだけ年を取ったということだが・・・)
病に伏せると健康のありがたみをヒシヒシと感じる。
最近の病院は一昔の病院と違って空気の重さをさほど感じない。外来で訪れたひとには解りづらいと思うが、ここでは人生の最大の喜びから人生最大の試練や悲しみがある。
二十歳の時、バイク事故で入院し、外泊許可をもらい松葉杖で成人式を迎えた。紋付袴で同室の皆に挨拶した時、おばあさんが「私が若かったらね?一緒に歩いて欲しいね?」と不自由な体でも満面の笑顔で話し掛けられた事を覚えている。
私の好きな唄にさだまさしの「サナトリウム(療養所)」というがある。この唄を聴くとあのおばあさんを思い出す。
療養所(サナトリウム)
作詩・作曲 : さだまさし
病室を出てゆくのというのに
こんなに心が重いとは思わなかった
きっとそれは
雑居病棟のベージュの壁の隅に居た
あのおばあさんが気がかりなせい
たった今飲んだ薬の数さえ
すぐに忘れてしまう彼女は
しかし
夜中に僕の毛布をなおす事だけは
必ず忘れないでくれた
歳と共に誰もが子供に帰ってゆくと
人は云うけれど それは多分嘘だ
思い通りにとべない心と 動かぬ手足
抱きしめて 燃え残る夢達
さまざまな人生を抱いた療養所は
やわらかな陽溜りとかなしい静けさの中
病室での話題と云えば
自分の病気の重さと人生の重さ
それから
とるに足らない噂話をあの人は
いつも黙って笑顔で聴くばかり
ふた月もの長い間に
彼女を訪れる人が誰もなかった
それは事実
けれど人を憐れみや同情で
語ればそれは嘘になる
まぎれもなく人生そのものが病室で
僕より先にきっと彼女は出てゆく
幸せ不幸せ それは別にしても
事実は冷ややかに過ぎてゆく
さまざまな人生を抱いた療養所は
やわらかな陽溜りとかなしい静けさの中
たったひとつ僕にも出来る
ほんのささやかな真実がある
それは
わずか一人だが 彼女への見舞客に
来週からなれること
創業昭和四年 安城建築 浅井宏充