一時は危機的状態にあったマツダが奇跡のV時回復を成し遂げました。そして今回フラッグシップ車であるアテンザのマイナーチェンジがおこなわれました。通常車のマイナーチェンジは新型が発表され3年程経過すると、売れ行きが落ち込む為、そのテコ入れとして細部のデザインを少々変更した程度で実施されるそうです。言うなれば売り手側の都合ですね。
今回アテンザのマイナーチェンジはパッと見た位では殆ど見分けが付かない程度の改良とでも言いましょうか。新型のお客様は勿論、旧型に乗っているお客様へも満足度が持続し続けて欲しいという配慮からでしょう。当然のことながらその様な車のデザインには飽きの来ない普遍的なものをベースとしたことが欠かせないことでしょう。
住宅も同様のことが言えます。私の師匠戸谷英世先生曰く、住宅展示場のモデルハウスは平均して5年で建替えられているそうです。(車10倍以上の価格の家が車のフルモデルチェンジより早くモデルチェンジしているのです)当然のことながら耐久性の問題では無く、デザインそのものが陳腐化してモデルハウスの来場者数が激減するためです。言うなれば売り手側の都合により消費者に築5年で道行く人が見向きもされなければ、住み手も誇らしくも思えない家を売っているということではないでしょうか。
米国が世界一の住宅先進国と言われる理由のひとつとして、中古市場においても家の魅力が持続していることにあります。例えば横浜や神戸の異人館は100年以上時を経ても人々を魅了し続けています。そして米国の住宅も横浜、神戸の異人館も設計デザインを思考する際、時を経ても陳腐化しない古代から現代に至るまで吟味されてきたデザインエッセンスが組み込まれています。勿論それを実現するにはデザインの歴史の知識と自身のデザイン能力が必要となり、残念ながら日本においては星の数ほどのデザイナーや設計士の中でも極めて僅かな人しか居ないのが実情と言えます。
創業昭和四年 安城建築 浅井宏充