多くの女性は幼い頃、リカチャン人形で遊んだ経験があるだろう。親から子へ受け継がれ続ける玩具はそうそう無い。想像性を育む最高の玩具だと思う。
話は飛ぶが、先日も某大手輸入住宅メーカーで検討されていた方がお越しになられた。話を聞いていると、どうもお客さんの考えている輸入住宅と私が考えている輸入住宅が結び付かない。
お客さんの欲しいと思われる家の参考写真から分かったことは、お客さんは本物が欲しいわけでは無く、輸入住宅風の可愛い家が欲しいということだった。その家はリカチャンハウスをそのまま大きくしたいかにもリカチャン世代が好みそうな家である。
さすが、大手メーカーはお客のツボを得ていると思った。販売促進を図るには、ニッチ層の本物よりもリカチャンハウスの様な不特定多数をターゲットにする方が得策である。
最終的にお金を払うのはお客さんである為、「いいんじゃないの?注文住宅だから好きな家にしてあげれば・・・」という声も聞こえて来そうだが、長い目で考えると、結果的に満足度が持続しなくなってしまうことは明確であり、どうもお客さんが損をすると考えると容易に引き受けることが出来ない。
私としては、可愛い家の中にも懐かしさや飽きのこない伝統的な部分を織り込まなければならないと思う。
建築の視点からリカチャンハウスを観ると、かなり違和感を感じる。ひと言で言えば、「日本人が考えたゴージャスな家」であり、米国ですし屋や日本料理店に行ったことのある方ならご理解頂けるかと思うが、「これってアメリカ人が考えた日本だと思うけど、ちょっと違うんだけど・・・」そんな感じがする。
リカチャンハウスと違って世界のドールハウスに共通することはしっかりとした伝統的なデザインを用いていること。
もし、リカチャンハウスを世界に通じるデザインにしたら家に対する子供のデザイン感性も次第に育まれ、大人になった時、飽きの来ない住宅を手に入れようと考える様になっていくに違いないと思う。それにより、世代毎の建替えも無くなり、地球環境にも繋がっていくと思う。
創業昭和四年 安城建築 浅井宏充