先代からの35年間お世話になっているW様。今回ご両親とご長男ご家族とご一緒に暮らすこととなり二世帯住宅のご依頼を頂き明日引渡しとなります。
弊社の先代からのお客様でお父さんはロケット技術者として人生の大半を歩んでこられました。数年前、お父さんのご自宅(35年前に弊社の先代が建てさせて頂きました)のリフォームの際の前打ち合わせでの雑談でこんなことを言われたことを思い出しました。
(お父さん)『いやぁ~最近、自動車業界から来る人がいるんだけど、精度が物凄く甘くてね~困っちゃうんだよね』
(私)『???』。『自、自動車の精度が甘いんですか~??』
(お父さん)『精度の順で言えば、自動車⇒旅客機⇒戦闘機⇒ロケットの順だね』
(私)苦笑いをしながら『お父さん、建築の精度は自動車の遥か下ですからお父さんの検査基準でのリフォームは無理ですからその点、お願いします』とお伝えした次第です。
そして今回の新築工事を終え、引越し前の古い家にお邪魔し、お父さんの入れてくれた特製コーヒーを飲みながらこんな話をされました。
『皆一生懸命に造ってくれた。工事中、細かいことも言って申し訳なかったけれども、俺は安建の家を自信(技術者として)を持って皆に観てもらい勧めたい。本当にそう思っている』と。
本当にありがたいなぁ~と感じました。
職人さんたちもロケット技術者のお父さんに一級建築士の息子さん、相当なプレッシャーだったと思いますが皆頑張ってくれたと感じています。塗装職人の夏目さん曰く、お父さんに『ロケットも最後の塗装が重要だからな・・・』って言われながら仕事をしたそうです(笑)
(話が少々横道にそれますが、仕事がらどうしても指先で撫でてしまうそうです。そしてロケットづくりも最後でおこなう検査はご自身の指先だそうです。そして検査は素手では無く、薄手の手袋をはめて撫でることで、機械でも測定出来ないゆがみが解るそうです。手袋をはめないと指先の指紋と超微量な汗により引っ掛かりが生じてしまい感度が鈍るそうです。そしてその機械でも測定不能なゆがみを職人さんが木槌で叩いて補正するそうです。それは、マニュアルでは伝えられない職人技であり、最後の最後は匠の域に達した職人のみがなし得ることができる仕事だそうです)
創業昭和四年 安城建築 浅井宏充