数年前に家を建てられた方からこんな話しを聞いた。
「50歳も過ぎ、人生最後の家を数年前に建てました。将来息子が家を建てる時のことを考え、スグに壊せる家をと考えましたが、結局はそこそこの金額になってしまいました」
最近よく聞く話しとして、親が造った家は物理的には十分住める。しかし、若い人はその家を壊したがる。何故だろう?理由はひとつでは無いと思うが、隠れた理由のひとつに私が思い当たることがあった。
それは、親世代が建てた家に「懐かしさが感じられない」からだと思う。誰もが同じ体験をされたことがあると思うが、懐かしさを感じると不思議と心が穏やかになる。そして、そんな感覚を感じられる自分が愛おしくなる。
もし、そんな感覚に浸れる家だったとしたら、その家を壊そうと思うだろうか?住宅会社や住宅雑誌よって刷り込まれた表面的な物質的欲求とは裏腹に、あなたの魂が望んでいることは、実は機能的で便利な家より、あなたの魂が安らげ、充電出来る家かもしれない。
余談だが、数年前あるホーロー看板収集家にお会いした。その方が、興味深い事を言われた。「不思議なんですけどね。ホーロー看板なんて見たことも無い現代の高校生が、このホーロー看板を見て懐かしいと感じると言うんですよ」
この話しを聞いて人は懐かしさを感じるDNAを受け継いでいると確信し、何となく嬉しくなった。
創業昭和四年 安城建築 浅井宏充