14年前、米国からカスタムハウスを専門に手掛けるフレーマー(建て方大工)のクルーを招いた際、彼らに日本式のツーバイフォー工法を説明すると理解しがたいと言った。当時国内で流通する合板のサイズや、図面の寸法の押さえ方、建て方の手順等は日本の軸組み(在来工法)の延長線上に乗せられた様なものであった。
その時、フレーマーのビルが言った言葉がとても印象的だった。「同じ材料を使って何故わざわざ弱い構造にしてしまうのか?」返す言葉が無かった。
米国を何度も視察し感じたことは、複雑な屋根でも如何に早く簡単に造り上げるかという技や、大断面の大きな材料を使用しなくても、トラス等(小さな鋼材を組み合わせて構造力学的に強度を持たせるもの。昔の鉄橋がそれに該当する)の組み合わせにより、圧倒的な強度を持たせる技術は日本の数倍先を走っていると思う。
弊社も日本古来の在来工法を親方から叩き込まれたベテランの大工がいる。当初、仕事が粗いと噂されていた米国フレーマー達を構えて見ていたが、彼らの頭脳とスピードに驚嘆した。その後、社内研修で訪れた米国の螺旋階段の工場視察で、彼らの神技を見せ付けられた時から米国職人を尊敬する様になった。
話が随分遠回りしたが、添付の写真は、正式な北米式ツーバイフォー工法の実践の一部である階段部分である。フレーミング時に構造として強固な階段下地を組み上げ、その上から階段材を張り付けていく。(日本式ツーバイフォー工法の場合、構造材で階段下地が造られることはない)隠れてしまう部分だが、長期に渡り階段のキシミ等を出さず、取替えが容易に出来る隠れた工夫がこの階段部分にも隠されている。
2階ホールから階段部分をのぞき込んだ写真。階段造作中の様子
創業昭和四年 安城建築 浅井宏充