夏の屋根職人は極めて労働条件が厳しい。屋根材の下に敷く黒い防水シートが直射日光を更に吸収し、焼ける様に熱い。私も経験があるが、真夏に屋根で作業をすると、昼の弁当を食べることが出来なくなり、そうめんしか喉を通らない。
建築用語で矩勾配(かねこうばい)の屋根と言えば、角度が45度の屋根。これだけの急勾配になると屋根足場の鉄管に?まりながらでないと移動することすらできない。
スキー場のジャンプ台同様、下から見上げたのではそれ程でもないが、ジャンプ台に登ると身震いする程の急勾配だと実感する。
その様なところを、屋根職人は重い材料を片手で抱きかかえながら上下左右に移動しながら作業をする。
当然のこととして急勾配の屋根は何もかもが落ちる。屈めばポケットから携帯が落ち、作業に使用する電動工具もほんの僅かな油断で滑り落ち使い物にならなくなってしまう。
材料も同様、専用の置き場(水平な場所)を造らなければ、そのまま滑って落下してしまう為、その都度、材料置き場に取りに行かなければならず、極めて作業効率が悪い。
職人曰く、「勾配の緩い屋根(屋根の足場がない現場)と比較すると、作業効率は3倍は余分に掛かる」。
創業昭和四年 安城建築 浅井宏充