安城建築

社長BLOG 2008.01.18

老舗工務店として、どうしても次の世代に継承しなければならなかった擬洋建築

もし、私がこの輸入住宅に関心を持った切っ掛けにご関心がある方は、「会社案内」の「経営者紹介」、「西洋住宅に憧れて」を見て頂ければと思う。

その中には書かれていないエピソードを少々。

この写真は、弊社モデルハウスの横に建っている築7年になる擬洋風建築である。私が建築に関心を持った原点であり、この建築は我が国が世界に誇ることの出来る建築である。勿論、輸入住宅のルーツでもある。

この建物も建築するにあたり、明治村に何十回足を運んだろうか?得に感銘を受けた三重県庁舎の移築報告書を参考にしたかったが、既に完売されていた。通い続けたある時、無理を承知で明治村の事務所へ、移築報告書を譲って頂きたいとお願いに伺った。

対応して頂いたのは、建築部長さん。さすがに西洋建築の知識は半端では無く、こころの底から西洋建築を愛している方だった。

暫く雑談し、本題の報告書の話しをすると、顔をしかめられた。「この建物は重要文化財です。この移築報告書を元に同じ様な建物を造られ、明治村と同じ建物です。と言われては侵害である」と言われた。

私は、中学校の社会見学で訪れた際、旧三重県庁舎を初めて観た時の衝撃をお話ししながら、次の様にお話しさせて頂いた。

「この明治村にある建物は、全て日本が世界に誇ることが出来る名建築だと思います。私は以前、北米の町並みを観て愕然としました。世界最古の(1300年前)の木造建築を造った我が国が築20年足らずで住宅をミンチ(解体)となり、建国200年足らずの国が築100年の住宅を売買されています。建築屋として築50年経た時、保存活動が起こる様な魅力的な建物を残したいと思います。そのお手本がこの明治村にあります」

「この明治村を造られた方は、ミンチされる美しい建物をどうしても残したいという強い想いがあったと思います。これらの名建築を明治村さんだけのものにしたいとその方は思うのでしょうか?私は、建築屋としてその想いを受け継がせて頂きたく思います」とお伝えした。

建築部長さんの表情が穏やかになり、「分かりました。特別にお譲り致します」と言われた。

破風(屋根の三角部分)は大工さんの手彫りによるもの。その昔、錦絵を見ながら擬洋建築を造った職人と同じ気持ちで大工さんが造り込んでくれました。

この建物が完成した時、立ち止まり、建物を見上げる腰の曲がったおじいさんが居た。
私が、挨拶をすると、深いやさしさに包まれたかの様におじいさんは言った。「とてもなつかしい」と。

この建物は正直言って、一部のマニアだけの建物であり、商業ベースで考えれば、建築会社としては採算の合わない建物である。建築にあたり、社内でも賛否両論があったが、老舗工務店として、世界に誇れる名建築を建てた先輩方への敬意を表し、どうしても次の世代に継承したかった。

創業昭和四年 安城建築 浅井宏充