私は、「住宅」(すまい)の取得(購入)は個人が成しうる最大の「買い物」(投資)であると考えています。

個人住宅であれ、マンションであれ、分譲戸建て住宅であれ、取得者(購入者)が決め手として考なければければならない要素は3つあると学んできました。

第一に「デザイン」、第二が「機能」、そして第三が「性能」です。
そして、この順番が特に重要です。

なぜなら、三番目の住宅に求められる「性能」は良心的な施工者と、ある程度の予算で十分に達成されます。不思議なことに住宅の供給者(ビルダー、ハウスメーカー、ディベロッパー)の住宅パンフレットはこの「性能」ばかりを「売り」にします。

官民一体となってすすめる「長期優良住宅」も要点はこの「性能」だけであります。
(これらは、全て、『デザインは十分に良いこと』が大前提だからでしょう?)

私も道具として使うパソコンや、デジタルカメラなら、まず「性能」を優先するでしょう。
予算さえあれば、最新のものが通常一番優れています。
でも、住宅がそれと同じであっていいはずはありません。
住宅は耐久消費材ではなく資産でなければならないからです。
パソコンや、デジカメには思い出や人生をきざむことはできません。

住宅(我が家、我がまち)には家族の思い、人生がきざめるものでなければなりませんから。

次に必要十分な性能がみたされれば、二番目が「機能」です。
住宅(住宅地)の機能とは、そこに住むひとが優しくなる、豊に感じられるような「空間」をもつことです。
なつかしさや、我が家、我がまち、としての帰属意識をもった住宅(住宅地)がその機能をもったことになります。
住宅であれば、その間取り、家族の顔が見えるオープンプラン(空間として豊と感じられる広がり)と家族の経営者である夫婦の寝室であると考えます。

そして、一番大切なものが「デザイン」です。
伝統的で美しいデザインは永く人々に愛され続けてきました。
古くなっても、美しいデザインの住宅は大切に住まわれ続けます。
そこでつくられた、かけがえのない思い出は人生を豊かにします。

美しいデザインの住宅に住むと、ひとは笑顔になります。
道行くひとは、その家を見上げて「素敵な家ね」と褒めてくれます。
住むひとは心がお洒落になります。

美しいデザインの家は「健康住宅」です。
エコハウスとかホームシック対策とか自然素材とかよりも、はるかに住む人の健康に良い住宅となるからです。

笑顔になるとご飯が美味しく食べられます。だから住む人は健康になります。

人から褒められるのは、その家の「性能」よりは「デザイン」であることの方が多いのではないでしょうか?

人から褒められる、皆が住みたくなる家(まち)、古くなってもこの家なら住んでみたいと思う家、中古になっても高い値段がつけられる家(住宅地)、これが資産価値だと思います。

かけがえのない個人の買い物である住宅の価値は、いつまでも持続するものでなければなりません。

平成22年8月10日  手塚 大和

創業昭和四年 安城建築 浅井宏充