少し前に米国のサブプライムローン(米国における住宅ローン)の破綻が増えていることが日本でも報じられた。日本国民の多くは、過去のバブルと同様の現象が米国でも起こったと思っているだろう。しかし、その実情が日本とは大きく異なっていることを知らない。

米国では住宅ローン返済が出来なくなった場合、住宅を差し押さえられるがそれで全て終わる。それ以上の返済義務は生じない。

その理由は、金融機関が住宅そのものの価値に対して貸し付け額を決定している為である。住宅会社がその住宅の価値以上の不当な価格を付けて販売しても通用しない。

以前にもお伝えしたが住宅の価値は、販売価格ではなくマーケットが決める。要するに「多くの消費者がこんな家なら暮らしてみたい」そう思える住宅でなければ当然のように価値は下落することが十分予想される為である。

一方日本では、住宅を差し押さえられたあげく膨大な債務も残る。その理由は、金融機関が住宅そのものに対しての価値では無く、消費者の支払い能力に対しての貸し付の為である。しかし近年、国や金融機関の予想に反し支払い能力を超えた貸し付けをおこなってきた為に自己破産がする消費者が激増したのである。

生臭い話しではあるが日本では、借り入れをする際、必ず団体信用保険に強制的に加入させられることを考えると、国や金融機関は「万が一の時は、自己破産すれば家も土地も無くなります。しかし、命を代償にすれば、家は家族に残りますよ」と小声で囁いているのと同様である。実は米国住宅ローン破綻より日本の住宅破綻の方が極めて深刻な問題なのである。

我々ビルダーの責務として、50年後も保存活動が起こるような住宅を消費者の適正な支払い能力以内でつくることにある。「こんな家なら暮らしてみたい」そう思える家なら、高値で貸したり、売却することも可能である。折角家をつくるなら、万が一の時には人生がやり直せることが可能な家の方がいい。

工務店はいい家をつくることが目的では無く、そこに暮らす家族が「豊かな人生だった」(「豊かな人生」とは物質的な豊かさでは無く、「こころの豊かさ」)と感じて頂くことが最終目的であり、そこに我々の様な地域ビルダー(工務店)の存在価値があると思う。

創業昭和四年 安城建築 浅井宏充