富士ハウス倒産により、波紋が次第に大きくなっている。新聞記事でもご存知の方も多いと思うが、手付け金だけ支払ってしまったが、工事は全くおこなわれない状態で破産し、膨大なローンだけ残り、何も手に入らない方もいるという。工事途中の方は引き続き東京の業者が工事をおこなう様だが、あくまでも残工事分の費用は東京の業者には支払わなければならない。

私が思うに、契約期限を切られ、「○○日迄にご契約して頂きましたら、○百万値引きします。更に○○日迄にご入金して頂けましたら特別に○十万値引きします。と煽られたのではと推測する。浜松駅から見えるあの大きなビルの会社がまさか破綻するとは思わなかっただろう。
これから家づくりをされる方に対して、「正しい家づくりの判断基準」をお伝えしなければならないと考えた。始めて家づくりをする方は住宅雑誌を読んだり、住宅展示場巡りから始めるケースが多いと思う。しかし、真実は見えない。

以前、弊社で建築されたA様が「建築業界ほど不透明な業界はありませんね」言った言葉がそれを象徴している。

もし、遠方に暮らす親友が「輸入住宅を建てたいので業者選びのアドバイスをして欲しい」と言われたら、次の様なことを伝えるだろう。あなたの業者選びの際の判断基準にされましたら、家づくりの成功に大きく近づくことが出来ると思う。

■過去に建てられたお客さまから評判を直接確認する。
□綺麗で立派なカタログより、建てられたお客さまの生の声こそが信頼性が極めて高い
⇒見学会等で現在進行中又は実際に建てられてた方に営業マン抜きで直接感想を尋ねてみる。

■工事を丸投げ(営業中心の業務だけおこない家づくりは他の工務店に施工させる業者)していなか?
□工事を丸投げする業者のトラブル実例
⇒お客さんと職人の距離が遠くなり、意思の疎通が多くなる。
⇒職人はお客さんと契約した会社に従うのでは無く、丸投げされた業者に従う。
⇒丸投げ先の業者は現場単位の契約の為、責任の重さが違う。その為、直接施工と比べ、現場管理も手薄になりやすく、クレームの発生率も極めて高い。
□丸投げする業者の見分け方
⇒事務所モデルハウスは綺麗だが、自社所有の作業場、トラックがない。
⇒直接施工体制を尋ねる。
⇒工事中の現場に行くと、○○工務店と書いたトラックが停まっている。
□補足
⇒「社内に現場管理者が居ますので、ご安心下さい」という業者も居ますが、管理者と監督とは違うことをご存じでしょうか?確認する点としては、直接職人さんに指示する現場監督が社内に居るか?を確認することが非常に大切です。又、現場監督の能力の差により、家の出来栄え(特に素人にはわかりにくく隠れてしまう部分)は大きく変わります。
工事の丸投げをする業者は下請け会社の中間マージンが計上される為、支払ったお金が無駄に消える。

■過去の施工した住宅に重大な欠陥がないか?
□JIO(日本住宅保証検査機構)の事故実例
JIOの事故報告によると、構造に及ぶ致命的な欠陥が生じやすい家の特徴は、軒の出で無い塗り壁(モルタル塗り)の家。修復をする場合、一棟あたり600万~700万程度の補修費が必要とされる。
□過去の施工した住宅に重大な欠陥の見分け方
⇒同上の塗り壁の家で、雨が上がっても黒い染みや黒い樹液の様なものが流れ出ている場合は、躯体構造用合板の腐食の可能性が極めて高い。(但し、施主自身その問題の重大さに気付かない場合が多い)
□補足事項
⇒回避方法としてJIO等の完成保証等の保険に加入することが有効的に思えるが、工事途中から業者が変わる為、完成後のメンテナンスの責任の所在が不明確となる。隠れてしまう部分のこだわり等、施工技術を持った業者を選択する必要がある。

■元々その会社はどんなことをしていたのか?
□建築が専門でない業者のトラブル実例
⇒美しいデザインを真似ることが出来ても、専門知識が不足している為、漏水等の長期に渡りメンテナンスフリーの住宅を施工でできない。
⇒会社の発足時、建築以外の異業種からの参入の場合、自社に建築技術者が存在せず、作業場等も無い為、工事の丸投げをする業者がほとんどである。
⇒本業が建築以外にある場合、建築の受注が悪くなれば、撤退する可能性が極めて高いと言える。
□元々その業者がどの様な業種から参入したかを確認する方法
⇒業者に直接尋ねてみる。
⇒本社のある商工会議所に尋ねる。

■下請け業者の評判
□下請け協力会社の噂=極めて真実性が高い
⇒直接現場での作業に携わる職人は営業マンとは比較にならないほど、現場の良し悪しを熟知している。社外の人間でありながらその業者の現場の裏の裏まで知り尽くしていると言っても過言ではない。職人同士での会話により、直接携わっていない業者の問題点までも知っているのが職人。(富士ハウスの破産危機情報も事前に職人の間では噂になっていました)

■会社の財務内容は大丈夫か?
□新聞広告、雑誌広告掲載=財務内容がいい業者ではない
⇒昨今の賢いユーザーの方々は、必ず依頼先業者の財務内容を確認している。
⇒立派な事務所、高級車、一見羽振りが良さそうに見えるが、銀行はその逆の見方をする。

■支払ったお金を最大限、家づくりに反映してくれる業者か?
□工務店と大手住宅メーカーを比較した場合
⇒もし、同じ様な家を工務店と大手メーカーに依頼したとしたらどちらが支払ったお金を十分に建築工事に反映してくれると思いますか?
⇒一見大量生産でコストダウンが図られていそうな大手メーカー住宅の粗利は6割から5割。工務店の粗利は2割から2割5分。つまり粗利が6割なら、お客さんが支払ったお金の4割しかあなたの家に使われないということ。

■受注棟数が多い会社=安心できる会社?
□受注棟数が多い業者に共通することは、その殆どの業者が営業主体の会社であり、設計管理、契約までおこない、後は全て工事を下請け工務店に丸投げする施工体制の会社が多いと言える。丸投げされた工務店やその職人はお客さんの為では無く、元請の機嫌を損なわない様に仕事をする。
当然のこととして、職人も信頼のおける者のみで施工することが困難となり、マニュアルやチェックリストで管理することとなる。

■どこまでも値引きに応じて来る会社
□工事を丸投げする業者(営業中心の業務だけおこない家づくりは他の工務店に施工させる業者)に多い。工事を丸投げする為、低価格による自社のリスクは最小限として下請け工務店に押し付ける形となる。もし、あなたが丸投げ先の工務店の社長だったとしたら、お客さんの為にいい職人を入れて、いい仕事をしようと思うだろうか?
□会社の財務内容が悪く、自転車操業の場合が多いと言える。結果的に途中で倒産したケースがある。(浜松の某大手住宅メーカーの破産)

■注文住宅を専門としている業者?建て売りが中心の業者か?
□建て売り中心の業者は、とにかく早く安く家を造る事を得意とする。その為、より建物を美しくする細部には手間と時間が掛かる為こだわることが極めて苦手と言える。「この家なんちゃって風?」と感じることは無いだろうか?

■設計士は輸入住宅の専門家ですか?
□輸入住宅を建てるなら輸入住宅を専門とする設計士に依頼することをお薦めしたい。何故ならお医者さんでも専門医別になっているのと同様、同じ一級建築士でも専門分野も違えば、その能力の差も大きく異なるからである。営業マンが図面を描くことは論外。
洋服と同様、同じ素材(建材)を使って造っても、デザインによりその価値は大きく変わってしまう為である。
長い人生、将来もしもの時にも大幅に家の価格が下落することの無い家がよい家だと思う。その為にも、新築時からノスタルジーを感じる様な美しいデザインにする必要がある。
設計の重要なキーマンである設計士の選択は非常に重要なポイントと言える。

■直接自分の家に携わる「監督と職人」と直接話しをする。
□家を建てる方の多くは、営業マンの人柄で業者を選択する。しかし、家を造るのは営業マンでは無く、監督や職人。施工中の現場を見学し、職人と直接話をしてみては如何だろうか?直接現場の職人に指示する現場監督の実績や相性も家づくりの満足度に繋がる重要なポイントと言える。

■満足度の高い輸入住宅づくりの共通条件、それはどんなチームで家づくりをするか?で決まる。
□これは私の経験から得た学びです。
⇒輸入住宅のデザインを熟知する「建築家」。北米式インチフィート2×4工法を熟知し、建築家のデザインを忠実に再現する構造躯体の設計をする「構造専門の建築士」。細かな装飾のバランスへのこだわりと、隠れてしまうがこだわらなければ後々問題が起こりそうな部分の納まりを日々探求し続ける「現場監督」。輸入住宅建材を熟知し、自分の仕事に誇りを持つ「職人」。そして海外のインテリアを熟知し、より魅力的な空間に劇的に変えてしまう「インテリアコーディネーター」。この5者が揃った時、満足度の高い輸入住宅となる。

■複数の会社から見積もりを取ることについて
□ライバル会社を比較に出すとどこまでも値段を下げてくる業者
⇒この様な会社は丸投げする業者に多いと言えます。その理由は、自社で施工しない為、必要最低限の手数料を抜けば、後は丸投げ先の業者と職人が苦しむだけで済む。
もし、お客様自信が丸投げ先の業者や職人だとしたら如何でしょうか?赤字覚悟の現場で果たしていい仕事が出来るだろうか?腕のいい職人は赤字覚悟の仕事を請けることはしない。
⇒どこまでも値引いてくる業者に多いのが、その会社だけしか考えていない場合、極めて高い価格の見積りを出し、逆にライバルが多いとどこまでも値引いてくる傾向があります。この様な業者で長寿の業者はいない。
□専門家でも不可能な各社の見積りの比較
⇒住宅雑誌には「複数の業者から見積もりを取りましょう」と書いてあるが、どうして比較が出来るのだろうか?と疑問に思う。もし、比較できるとしたら、「全く同じ図面(詳細図面が必要)」、「同じ仕様書」、「同じ見積り書式」の場合のみ見積もり比較が可能となるだろう。しかし、ひとつ重要なことをお伝えしたい。例えば、同じ図面、同じ契約金額で契約しても、施工する業者(技術者)が違えば、一見同じ様な家に見えても違う家となる。その理由はシンプル。職人や現場監督の志や技術レベルによって大きな差が生じる。家は車の様な完全工業化製品とは異なる為である。
□金額は総トータルで考える
⇒ライバル会社がいる場合、どうしてもその工事を受注しようと考える業者は、解体費用や造成費用を赤字覚悟の値段で見積りを出し、その後建物本体や追加工事で利益率を上げようと考える業者も存在する。
□隠れてしまう部分の仕様の確認
⇒注意点として消費者の多は、目に見える部分(設備)には気にしますが、実は目に見えない部分こそ、暮らし始めるとその違いが体感出来る。特に隠れてしまう部分構造や断熱材等の違いを十分に把握しておく必要があると言える。完成現場見学も重要だが、施工中の現場を見ることをお勧めする。
□もうひとつの大切なこと
⇒注文住宅は、工業化製品の様に工場にて機械で組み立てられる訳では無く、全てに渡って「人と人との関わり」によって造り上げられていく。造り手の思いや感情が家づくりに込められた時、極めて顧客満足度の高い家づくりが可能となる。

■「高気密高断熱」=「年中快適な家」ではない
業者の中には「弊社の住宅は高気密高断熱なので、年中ルームエアコン1~2台で家中温かいですよ」というお話しを聞く。それはあくまでも机上論での話し。特に愛知県の場合、夏は高気密高断熱が故に熱が分厚い断熱に「熱がこもる」ことを考えた家づくりが必要である。一旦熱のこもった家を冷やすことは容易ではない。実際に、超高気密高断熱の家に暮らされている方の生の声は「夏暑い」である。年中快適な室内空間にするには、全館空調システムが必要不可欠である。

創業昭和四年 安城建築 浅井宏充