設計士の手塚氏には月に1、2回、僅かな週末のプライベートな時間を割いて、(平日はご自身の仕事で多忙を極めている)遥々新幹線にてお客様との打ち合わせにお越し頂いている。

手塚氏が手掛ける仕事の多くは大型プロジェクトであり、皆様ご存知のテレビドラマ「アットホームダッド」、やデンソーさんのコマーシャルにも登場するあの美しい輸入住宅の街のプロジェクトもその作品のひとつである。この街は、建築業界の中でも非常に話題となり、国土交通省のお役人の方から100社を越す建築会社や不動産開発会社が全国から多数見学に訪れ、街づくりのお手本にされるほど高く評価された。

私がこの業界に携わり、21年となるが、この手塚氏程輸入住宅や西洋住宅の技術と、真の設計フィロソフィー(思想)を持ち備えた設計士を私は知らない。誰もが国内トップクラスであることを認めている。

「その様な設計士の先生がどうして?安城まで?」という質問を時折お客様から頂く。

これだけの大型プロジェクトを手掛ける仕事と、一棟の注文住宅から手塚氏が得られる報酬を考えた時、正直言って割りに合わないと思う。しかし、例え一棟の注文住宅においても手塚氏の想いは変わらない。上記の様なお客様の質問に対して、手塚氏が語ってくれた事に深く感銘した。(笑いながら・・・)こう語ってくれた。

(手塚氏)「正直、割りに合っていませんね。しかし、安城さんとは目指している部分が同じだったんです。そうでなければ、ここまで来ることは無かったと思います」

(手塚氏)「ユーザーの方が住みたくなるような街やデザイン性に優れた美しい住宅を造るということは、あくまでも通過点に過ぎないと考えています。結果的に住まわれるユーザーの方が幸せになって頂かなければ、それは造り手である我々の自己満足だけで意味が無いと思います」

(手塚氏)「これは実話ですが、築数年後、お客様宅に伺うと、どの奥さんも、よりお洒落でより美しくなっているんです。奥さんが美しくなれば、旦那さんも早く家に帰りたいと思うことでしょうし、お子さんにとっても自慢のお母さんになると思います。そして結果的に安城さんのミッションでもある家族の絆に繋がっていくと思います」

(手塚氏)「世界各国に共通しますが、年月が過ぎても誰もが憧れる美しい家なら、中古市場でも大幅な下落は避けられると思います。もし万が一の時でも、家そのもの価値が下落しにくければ、それだけでも家族の安心に繋がります。最終的にそれを満たす街づくり、家づくりをすることが設計士の仕事だと思います」

時折、手塚氏と他社とで比較検討したいと言われる方には、上記の手塚氏の想いを知ってからは、その想いをお客様へお伝えさせて頂いている。それでも比較したいという方には、申し訳ないが、丁重にお断りさせて頂いている。上記の様な想いで仕事に取り組んでくれる手塚氏を大切にしたいと思う気持ちからである。手塚氏には「手塚氏に設計してもらいたい・・・」そんな想いのお客様だけの仕事をして頂きたいと思う。

ユーザーの心理としては、少しでもいい家をお値打ちにと思う気持ちは十分理解できる。その中で他社と競合させた方がお値打ちになるとお考えになる方も居るだろうが、弊社では競合したからお値打ちにする様なことは創業来一切おこなっていない。

理由は真の安建ファンの裏切ることが出来ないからである。安建の真ファンには高く、どちらでもいい方に安くする様なことは、一瞬にして会社の信頼を失うことになる。勿論、不当な利益を得る様なことはしない。もし、その様なことがあれば、ここまで続いていなかっただろう。あくまでも社会に長く必要とされ続ける会社であり続けたいと願う。

手に入れる家の価値や価格は、家の大きさと仕様書だけでは決まらない。家のデザイン、造り手の想いや技術レベル、チームワーク等、数値では表示されない。しかし、その数値で表示されない部分によって家の良し悪しが明確となっていき、結果的にユーザーの満足度も長い間持続することが出来ると考えている。

時折思うことは、家を建てる最大の理由は、「人生をこころ豊かなものにする為」だと思うが、様々な情報の洪水の中で、ユーザーの多くがそれを見失ってしまっていると私は思う。

創業昭和四年 安城建築 浅井宏充